短歌連作『うれしい近況』

新作短歌13首による連作です。
岡野大嗣 2022.03.29
誰でも

そんなふうに春だって知る缶コーンスープどこにも買えなくなって

光ってる川を川だと気づかずにみてた気づいてからはまぶしく

プードルの黒が桜の咲きかけの真下を高架下の川沿いの

乗り換えの駅構内に鳩が飛ぶほとんど外の光の中を

今すごく東京にいる縦長の間口の狭いファミマの奥で

番号でタバコを買っていくひとのコートの薄い生地かっこいい

プロテストソングがSEに流れてる当日券で来てみたライブ

ひさしぶりー、って声にして気づくひさしぶりの感覚がおかしくなっている

ボーカルの話すうれしい近況のうれしいピークで鳴るハイハット

看板をみつけては読み上げる声 桜をうれしがらないひとの

隠しごとを打ち明けるなら春の夜の廻るタイプのジャングルジムで

わかんないようでわかるよ歯磨きのあとのりんごのようなさびしさ

踏み切りを挟んでまたね二人でしか分かち合えないジョークで笑う

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