A Cinema Ghost

短歌8首による連作です。
岡野大嗣 2023.01.24
誰でも

狭域で言えば高架沿いの路地の 広域は海沿いの映画館

ポスターを見てから観るか決めたこと 観たことよりも覚えているよ

水流であおる星と輪 銀幕へ透かして星ばかりを追っていた

右斜め前に座っているひとの肩がふるえてしずかな字幕

はしごしていた劇場も閉じられて色づいていくはしごの記憶

本編を愛せなかった散文がパンフレットを光らせている

栞代わりにした正誤表 感想を残した正誤表 正誤表

パンのときもごはんをたべるって言うような そういう映画館だったこと

 初出:俳句結社「蒼海俳句会」 季刊『蒼海』18号より 一部改変

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