ついさっきの

新作短歌17首による連作です。
岡野大嗣 2022.04.11
誰でも

思い出そうとしたら出せる遠足はリュックの紐に親指かけて

春といえば鳴らしていない自転車のベルがほのかに鳴ってくる道

減っていく四月の時間 改札に人が減ったり増えたりしつつ

通過したわけなのに前方をみてしまういつもは揺れないところで揺れて 

あくびかみころさなきゃいまアナウンスかんじんなところをはなしてる

けっきょく観にいかなったのなんか上手い感想ばっか流れてくるし

いつのことだか前に座っているひとのエクレアのカスタードはみでそう

すっと流してしまった安堵だけどわりとかみしめなきゃいけないやつだった

子音のかっこいい洋楽がかかって意識を預けながら服をみる

パーカーを羽織りなおすのくせですね聞かれていないけど答えてた

スニーカーの裏地まっきみどりでいい脱いで座っていてみえている

ポートレートモードでも、って言ってもらって桜の下でじっとしている

パンに近づいてくる犬 こんにちは だいじょうぶもうみえてないから

老犬と教えてもらって さようなら あんな余生ならば過ごしたい

人間でいえばどのくらいの罪か 鳩が鳩からパンをうばって

もうそれも知らないままでいいと思う知らない植物のしらべかた

さっき撮った春が写真からもまぶしいほんとうについさっきのことだから

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