見えるから

短歌8首による連作です。
岡野大嗣 2024.10.12
誰でも

骨折の高校生が原因のように楽器を連れている朝 

冷風がときどき当たる地下道を最近のこと話して歩く

バイエルの赤が黄色になるまでの羽化を夢見ているくすりゆび

弾くたびに忘れてしまう転調がここで来そうでまだ来ないこと

歩道橋を渡ると消えていきそうな自分が怖いけどうれしいよ

前輪についた角度が冴えていて冬と見まがう夜の駐輪

もう長くないのに写真に撮ってみて画像で見ると元気に見える

右はいやがる 左はいやじゃないみたい 寝付くまで左手を握ってる

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